県知事・教育長メッセージ

 臨時休業中の子どもたちについて、格段のご理解とご配慮をいただいておりますことに対し、深く感謝申し上げます。

 さて、県知事・教育長よりメッセージが出されました。つきましてはよくお読みいただき、よりどころとしていただければ幸いです。


2020年3月11日のメッセージ

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から9年。

 東京2020オリンピック・パラリンピックへの期待が高まる中、福島では、事故の対応拠点となっていた「Jヴィレッジ」が全面的に青々とした芝を取り戻し、サッカーをする子どもの憧れの地として再び輝き始めています。
帰還することが困難とされていた地域の一部で避難指示が解除され、一部区間が休止を余儀なくされたJR常磐線は、列車の響きを取り戻します。
 福島は復興に向け、着実に歩みを続けています。
 一方で、現在も4万人を超える県民の皆さんが避難生活を続けています。
 ふるさとの生活を取り戻した方も、時間の経過がもたらした変化と向き合っています。
根深く残る風評や薄れゆく関心の裏で、今もなお苦しい思いをしている子どもや孤立した生活を送る県民の皆さんがいます。
 昨年は全国各地で災害が頻発する中、福島も台風と大雨により甚だしい被害を受けました。
私たちはいまだ、様々な課題を抱え、復興には長い時間がかかります。

「震災があったから自分がある。どんな時も『お互いさま』と思えるようになった。
みんなが笑顔で支え合う社会を夢見ています。」 (本宮高校 今野実永さん)
「被災した時、多くの人に助けてもらった。今度は自分が人助けで恩返しできれば。」
(双葉町の新成人 渡辺碩さん)

「福島はいまだ復興の道半ばです。進む人、とどまる人、じっくり考える人、いろいろな人がいらっしゃいます。それが福島の真実です。」
(関西から県民シンポジウムに参加した大学生 大久保恵子さん)

 本県の多くの若者が「人のためになりたい」と願い、行動しています。
 私たちは、多くの優しさに支えられ、助けられながら、一歩ずつ復興への歩みを進める中で、自分たちもまた誰かのために何かしたいという思いを強くしました。
優しさが持つ力を知った私たちは、これからも互いを認め、寄り添い、支え合い、幾多の苦難にも果敢にチャレンジを続けていけると確信しています。

「『私たちは震災に負けずに頑張っているんだよ』ともっと積極的に全世界に発信することで故郷はもっと輝き、震災前よりもさらに活気あふれる場になると思います。」
(湯本高校 猪狩愛心さん)

 震災から10年目、「令和」という新しい時代。
 私たちは復興の新しいステージを切り拓く時期を迎えています。
 今、福島では自分たちの地域を次の世代へつなぐため、新たな仕事づくりにチャレンジする方が増えています。
 私たちが一生懸命取り組む姿は、未来への前向きなメッセージであり、皆が挑戦を続けていくことが復興・創生につながっていきます。
 震災により突然日常を奪われた私たちは、先人が築いてきた福島の日常がどれほどかけがえのないものかを身をもって知りました。
 だからこそ私たちは、震災を知らない世代に震災から学んだこと、災害は他人ごとではないということを伝えていかなければなりません。

「今はまだ語るのが難しい」という県民の皆さんも大勢いらっしゃいます。
そうした方々が震災を語れる日が来るまでそっと寄り添うこともまた大切です。
「将来は、世界中の人たちに僕が育てた牛のミルクを飲んでもらいたいです。
村の農業を世界に発信し、酪農家として夢をかなえる一歩としても走りたい。」
(聖火ランナー 葛尾中学校 佐久間亮次さん)

 福島の地から、まもなく聖火リレーがスタートします。
 夏には野球・ソフトボール競技がここ福島で開催され、世界中から多くの人々が訪れます。
 オリンピック史上初めて聖火台の燃料に使われることとなる水素。
 この福島で作られ、環境負荷の少ない次世代エネルギーという人類の夢を全世界に発信します。
 オリンピックのビクトリーブーケには福島のトルコギキョウが選ばれました。
 花言葉にある「感謝」と「希望」。
 私たちは福島を支えていただいている方々や思いを寄せてくださる方々に「感謝」を伝え、世界中の皆様に福島が「希望」の光を灯し、一歩ずつ前に進んでいる姿を見ていただきたいのです。
 多くの困難に立ち向かう中で身につけた強さとしなやかさを糧に、私たちはどんな困難をも乗り越え、いつか必ず復興を遂げる日がやってきます。
 厳しい冬の後に春の訪れを告げる梅が咲き誇り、人々が和して暮らす「令和」に込められた願い。
 私たち一人ひとりがそれぞれの色の花を咲かせられるよう、「ふくしまプライド。」を胸に刻み、皆さんと共に、人と人、心と心が調和する、希望に満ちた魅力ある豊かな福島の未来を切り拓いてまいります。

令和2年3月11日

福島県知事   内堀  雅雄  

 


 

児童・生徒の皆さんへ

-学校の臨時休業に関する福島県教育長メッセージ-

 学校が臨時休業となってから約1週間、高校生は10日となります。皆さん、どのように過ごしていますか?
新型コロナウイルスの感染拡大防止のためにはやむをえないことでしたが、入学試験や卒業式を控える年度末の重要な時期に、心の準備もままならないうちに、急に先生や友達に会えなくなってしまいましたね。胸が痛みます。
 準備期間が短かったにも関わらず、保護者の皆様、教職員の皆さん、放課後児童クラブの運営を行う皆様など子供たちに関わる多くの方々が準備に奔走してくださり、無事に休業に入ることができました。また、臨時休業中の子供たちを、創意工夫を重ねて見守っていただいていることに心から感謝申し上げます。
児童・生徒の皆さんは、新型コロナウイルスという見えない敵、そして、いつ学校が始まるのかわからない状況に対して、不安を感じているかもしれません。特に、中学生、高校生の皆さんは、9年前の3月に似たような経験をしたことを思い出すかもしれません。
 このようなときだからこそ、一人一人が何をするべきか冷静に考え、判断し、行動していくことが大切です。そして、ピンチの中からチャンスを見いだしていく前向きさを失ってはいけません。臨時休業という状況を、感染拡大の防止のみならず、学習や生活の面でも何とか有意義なものにしたいものです。
まず、今は新型コロナウイルスの感染の拡大防止が最優先です。学校から今回の臨時休業の趣旨、注意事項などが伝えられていると思います。未知のウイルスであるが故に、ウェブ上には誤った情報が流れている場合もありますが、何が正しい情報かを見極め、感染拡大防止に向けて何をすべきか、何をすべきではないのかを冷静に判断してください。
 次に、皆さんの心身の健康についてです。不規則な生活になっていませんか?ゲームばかりしていませんか?時々は体も動かしていますか?誰かとお話できていますか?時々笑っていますか?もちろん人混みに出かけることは控えていただく必要がありますが、ジョギングや縄跳びなど可能な運動もあります。それぞれに自分と向き合って考えてみてください。
 そして、急にできてしまった「何もない時間」を有意義に過ごす方法を考えてみましょう。普段は、学校、部活動、習い事等で忙しくしているので、急に時間ができると何をしたらよいかわからなくなりがちです。
 例えば、日常生活の中で家庭のお手伝いをしてみませんか?小さくても普段できない体験活動です。家族の方とコミュニケーションをするきっかけにもなります。居場所と役割があると気持ちが前向きになります。
このような時期だからこそ、本や新聞を読んで物事を考えてみてください。今のところは県立図書館も開館しています。団体活動はできませんが、個人利用はできます。ビブリオバトルへの参加もお待ちしております。
この機会に苦手科目を克服するのはいかがでしょうか?ふくしま学びのネットワークの前川直哉先生も提案されているように、時間が取れる時にしかできない広い範囲の復習なども考えられます。ウェブ上にも様々な無料の学習コンテンツが掲載されています。
 中学生や高校生の皆さんは、自分が政治家になったつもりでテーマを決めて、友達や先生とウェブ上で議論することもできます。SDGsの中からテーマを選ぶのもよいと思います。「君が学ぶと世界が変わる」と私も思います。
なお、今回の休業のために、学年の修了や卒業などが不利になることは決してありません。授業ができなかった分をどのように補うのかについては、教育委員会や校長先生がきちんと考えてくださっています。
 最後に、まわりの人たちへの心配りです。弟や妹がいれば、日常の生活が一変してしまった不安をいたわってあげてください。ご両親をはじめとした大人の皆さんも大変な苦労をしています。自分に何ができるかを考えてみてください。新型コロナウイルスに関連して、いじめや差別があってはならないことは言うまでもありません。
 普段当たり前であると思っていた日常的なものが、無くなってみて初めてその重要性に気づくことがあります。学校は、皆さんにとってそのようなものなのではないかと思います。
ピンチをチャンスに変えることは簡単ではありません。しかし、福島県は「チャレンジ県」としてピンチをチャンスに変えようと、この9年間皆で力をあわせ復興に取り組んできました。その蓄積を今こそ生かしましょう。
 少しでも皆さんの不安が減って、有意義に過ごせること、そして、早期にウイルスの感染が終息して学校が再開し、皆さんがまた笑顔で先生や友達とともに過ごせるようになることを祈っています。


令和2年3月12日

福島県教育委員会教育長   鈴木  淳一